鈴木岳 氏
R-body project代表
あなたのカラダ、正しく機能していますか?トレーニングの前に、自分のカラダを知るべき理由 | Delta Talk Vol.6 – 菅原順二(ReebokONEアンバサダー)×鈴木岳.(R-body project代表)

リーボックのブランドアイデンティティであるデルタロゴは、フィットネスがもたらすベネフィット「フィジカル(カラダ力)」「メンタル(精神力)」「ソーシャル(人との結びつき)」の3要素を表現しています。

それらを体現している多彩なゲストが語る対談シリーズ「DELTA TALK」の第六弾は、Reebok ONEアンバサダー/パーソナルトレーナーとして活躍する菅原順二をホストに、数々のトップアスリートを支えてきたR-body project代表の鈴木岳.さんが登場です。

”カラダの現状把握”の重要性

Q 本日のメインテーマは、”カラダを知るコト”です。数々のアスリートやトレーニーを抱えるお二人ですが、自分のカラダについて知っている人は、どれくらいいるものなのでしょうか? 
鈴木 う〜ん、全然知らないと思いますね(笑)。今でこそR-bodyのような施設でトレーナーがカラダをチェックして「問題がありそう」「このままだと怪我をするかもしれない」と、”現状把握”をするようになりましたが、ここ最近の話ですね。15年前は「自分のカラダの現状を把握しよう」っていう発想すらなかったんじゃないかと思いますね。

菅原 アスリートも案外、自分のカラダを全然わかっていないんですよね。カラダのことを知らなくても、できちゃうから(笑)。でも、考えていないから、怪我をしてしまうんです。僕自身、現役を引退してピラティスに出会ってから「自分のカラダってこんなに動かないんだ」って気づかされましたし。お客様やアスリートにこの気づきを与えること、カラダについて考えるきっかけをつくるのが、僕たちトレーナーの大事な役割なのかなと。

鈴木 そうだよね。僕はアメリカで、怪我をした選手のリハビリを担当するアスレティックトレーナー(ATC)として働いていたのですが、痛いところを何とかケアして、試合に出られるようにして、また痛くなって、っていうサイクルの繰り返しで…。それよりは怪我をしないカラダをつくった方が良いと考え、痛い/痛くないではなく、今のカラダの状態を把握することが大切だと思うようになりました。

菅原 例えるなら”車検”ですよね、カラダのチェックとメンテナンス。同じようなトレーニングをしても、感覚や再現性には個人差があるので、カラダをどう動かしているかを知ることがパフォーマンスアップにはとても大切。ブランクに陥った時、感覚だけでカラダを動かしてきた人は、調子が悪い時に自分のどこがおかしいのか、ブレイクダウンできなくなります。

鈴木 その最悪のパターンが”イップス”ですよね。痛みはないけど、カラダがうまく動かせない=機能不全に陥った状態です。何かいつもと違う、思っているようにカラダが動かせない、ということから始まりますが、レベルが高い人になればなるほど、案外小手先だけでもなんとか対処出来てしまうんですね。でも、そこに再現性がないので、また分からなくなって、どんどん混乱していく。自分のカラダや動きを常にチェックして理解していれば混乱することはないし、イップスになることは少ないはずなんです。

鈴木 岳.

株式会社R-body project代表取締役/PhD, ATC, FAFS, CSCS, FMS/SFMA, PESアスレティックトレーナー 米ワシントン州立大学卒業。帰国後、1998年より全日本スキー連盟専属トレーナーとなり、上村愛子、里谷多英など多くのアスリートの活躍を支える。その後筑波大学大学院にて博士(スポーツ医学)号を取得し、トレーニング理論やスポーツ医学に関する執筆も数多く行う。
2012年ロンドン大会、2016年リオデジャネイロオリンピック大会の日本オリンピック委員会(JOC)本部メディカルスタッフ。東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会大会準備運営第一局(医療)アドバイザー。

毎日同じことをしていると、変化に気づくことができる

Q イップスやスランプに陥ったアスリートには、どうアドバイスしていますか? 
菅原 一般的にトレーナーは競技スキルに介入しない方が良いと言われていますが、自分はそう思っていなくて、競技のド素人だらこそ、言ってもいいことがあると思っています。固定概念にとらわれることなく、カラダの状態や動きをみて気づいたことを率直に伝えるように努めていますね。

鈴木 僕はひとつだけ決めていることがあって、メンタルで混乱している選手に、メンタルの話をしないようにしています。自分だったら落ち込んでいる時にメンタルトレーニングを熟知していないトレーナーからメンタルについて何か言われても、「お前に何がわかる?」ってなりますから(笑)。
僕はアスレチックトレーナーなので、カラダの状態、ここは動いているけどここは動いていない、など、アスレチックトレーナーの視点に基づいて、神経・筋・骨格のことについて起きている客観的な事実だけを言うようにして、そこから選手とともに解決の糸口を見出すようにしています。

Q カラダの”現状把握”は、どれぐらいの頻度で行なうものなのでしょうか? 
鈴木 カラダは常に変わっていくので、コンスタントに動作評価する必要があります。R-bodyの施設を利用するお客様の場合、現状把握の時間を設けるのは2~3か月に1回ですが、きちんと動作評価が出来るトレーナーからすれば、トレーニングそのものがチェックになるので、毎日のトレーニングそのものが評価になります。「とりあえずこれをやって」ではなく「なぜこれをやるか」。やってみてできない理由はどこにあって、問題があるのか。日々、現状把握しているようなイメージですね

菅原 ピラティスの良いところは、ルーティン化できるところ。毎日やれることが重要ですね。そうすると、”今日は”回旋してないとか動きが良くないとか、状態がわかりやすいんです。そのうえで、悪いなりに調整し、悪いなりにパフォーマンスを出す方法を自ら考えるようになれるんです。

鈴木 毎日同じことをしていると、変化に気づくことができる。ゴールは、「今日のカラダはこんな状態だからこれをやろう」と、自分のカラダを自分で管理することなので、トレーナーがいないと何もできないとか、トレーナーに依存するのではなくて、自分で考えられるように指導する必要があると思いますね。

菅原 順二

ReebokONEアンバサダー/トレーニングスタジオ aranciaオーナー
法政大学ラグビー部を経てニュージーランドにて2シーズンプレーする。帰国後、法政大学ラグビー部のヘッドフィジカルコーチとして活動を開始、プロアスリートからダンサー、モデル、女優などのパーソナルトレーナーとして、「理想の姿勢と無駄のないカラダの使い方」を追求。Body Element System Japan(BESJ)ピラティス、マスターストレッチ、ボディキー、Tye4の指導者育成・普及・ワークショップの企画・運営にも携わっている。

コンディショニングは、生活の質をあげるために必要なこと

Q「コンディショニング」について、お二人の定義を聞かせてください。 
鈴木「コンディショニング」はもともとアメリカの「ストレングス&コンディショニング」という一対の概念からきています。僕もアメリカでその考えを学び、日本で約20年間活動してきました。
最近、海外で講演する機会が増え、その中で気づかされたのですが、僕たちの考えはいつしか、ジャパンオリジナルの「コンディショニング」になっていたんです。そうして辿りついたコンディショニングとは、「痛みなく自分のカラダを自由自在に操れるようにしておくこと」。つまり「生活の質をあげるために必要なこと」だと、僕は考えています。だからこそ、アスリートだけでなく、一般の方にもコンディショニングは必要ですし、コンディショニング人口は絶対に増えると思います。生活の質をあげるために必要なことですから。
生活の質を上げるためにフィットネスをする気にはならなくても、コンディショニングで痛みのないカラダを手に入れたい、という人は必ず増えてくるはずです。菅原 ピラティスもヨガも、もともとは生活の質をあげるためのコンディショニングだったはずですが、いつしかスキルを競うようなスポーツになってしまいました。だから、怪我も増えた。クロスフィットで怪我をするのも、あれは競技だからです。競技やスポーツがダメだという意味ではなく、スポーツを始める前に、もっとやることがあるということなんですよね。

鈴木 例えばクロスフィットは、ファンクショナルトレーニングの集大成で、あれはカラダの機能をあげるために素晴らしいものです。でもその前に、関節が正しい動きをしているかを知り、動かし方を知らないと、どんなに筋肉をつけてもパフォーマンスにはつながりません。
この「技術」「トレーニング」そしてカラダの動きを知る「コンディショニング」の3つが結びついていないことが多いんですよね。

鈴木さんが提唱するウェルネスピラミッド

”オタク集団”で終わっては、トレーナーに未来はない

Q 昨今、短期間で取れるトレーナー資格もありますが、トレーナーが増えることについてはどう考えていますか? 
菅原 僕はいいことだと思っていますし、どんどん増えて欲しいですね。2日間の研修で資格を取ってトレーナーを名乗ったとしても、どのトレーナーを選ぶか、良い/悪いを決めるのは、お客様ですから。例えば僕はオフィスワークを経験したことがありませんが、オフィスワークの経験がある人がトレーナーになり、お客様の気持ちに立って活動すれば、僕が救えない人を救えるかもしれないですし。

鈴木 僕も、増えるのは良いと思いますね。それだけ、カラダについて知る人や考える人が増えることにも繋がるから。狭い世界でいろいろ言うよりも、まずはパイを広げること。そしてパイを広げた後に初めて、その中でホンモノかどうかの勝負の時が来ると思っています。間口は広くても、この世界は物凄く奥が深いですし、知識量によってできる仕事も変わりますからね。

Q スポーツトレーナーの価値を高めるには、何が必要でしょうか? 
鈴木 僕たちは、”運動”に関しては相当なことができるという、誇りとプライドを持っています。だからこそ、「トレーナーなんて大したことない」って言われることに対して、ものすごく拒否感や恐怖感があるんですよね(笑)。医者への妬みのような。だから、持っている知識を難しく話したがる傾向がある。また、得た知識を、どうビジネスにするかは関係なく、とにかく知識を増やすことだけにフォーカスしてしまう場合も多いように思います。もっとクライアントの視点を持つべきだと思います。お客様がいて、僕らトレーナーがいて、お客様のカラダが変化して、そこで初めて「トレーナーって凄いね!」ってなるんです。自分の知識がどんなに増えても、それだけでは評価はされない。知識の”オタク集団”で終わってしまっては、トレーナーに未来はないと思います。
そういう「お客様のニーズがどこにあるのかを考え、何を提供してどう結果を出すか」という視点を多くのトレーナーが見逃していることに対しての危機感はありますね。R-Bodyでは知識だけでなく、それを用いてどんな変化が起きたかを検証して、結果を出すことを重要視しています。菅原 僕は、もっと幅広く、いろんなトレーナーがいてほしいと思います。例えばフィットネスクラブで50人とか100人とかを対象にレッスンしているトレーナーって、本当に凄いと思うんです。でも、パーソナルトレーナーは、そういった人を見下すようなところがある。でも、それっておかしなこと。対象者も年齢も違う100人ものお客様を一気に満足させる、動かすことって、本当にすごいと思いますね。

教えられる側にも資質が問われる時代、「コーチャブル」という概念

Q トレーナーとお客様とは、どのような関係でいることが大切ですか? 
鈴木 教える人=トレーナー、教わる人=お客様という関係はありますが、どちらが偉いとかではなく、お互いが尊敬する関係でなければ、良い結果は出ません。最近は教わる側の能力の概念として「コーチャブル」という言葉があるのですが、これは、トレーナーの能力を最大限引き出すのもクライアント次第、という考え方です。
お客様がより充実した指導を受けるために、その環境をお客様自らがつくり出す。トレーナーの知識・技術が120%出るような関係をつくることは、お客様にとって最もハッピーなことだと思います。もちろん、トレーナーは謙虚であるべきですが、コーチャブルなクライアントをつくることも、これからはとても大切になってくると思います。菅原 お互いが尊敬しあうって、本当に大事。「あのお客様は教えにくい」とか、お客様のせいにしているトレーナーもいますが、どちらもアンハッピーですよね。コーチャブルなお客様は、トレーナーからすると気持ちよく踊らされてしまった、またいっぱい話しちゃったみたいな、聞き上手で話させ上手な人ですね。

日本のコンディショニングは世界に通用する

Q では最後に、お二人の今後の展望や目標を聞かせてください。 
菅原 僕はなぜトレーナーをやっているのかというと、もっとカラダについて学ぶ環境があったら、違ったアスリート人生を歩めたかもしれない、という想いがあるから。そういう思いをするアスリートを減らしたいと思っています。
もうひとつは、子どもの頃に、好きなスポーツに出会える子を増やしていきたいですね。自分みたいにやりたいことを見つけて、勉強して生きていく。それが、僕らがトレーニングを通じて世の中への貢献ができる方法かなと思っています。鈴木 僕はまず、トレーナーの価値や認知を高めたい。2020年の東京はトレーナーの価値や認知を上げるには絶好の機会ですが、大事なのはその後。トップアスリートがやりこんでいったコンディショニングが、一般の人たちに落とし込まれて、世の中に浸透させていく必要がある。生活の質をあげるために、快適に人生を送るための土台になるべきものですからね。
海外で講演をやってびっくりするんですが、日本のコンディショニングサービスは間違いなく世界に進出できる。特にセラピストなんかは、間違いなく日本人が世界一ですよ。ヨーロッパ行ってもアメリカでもとにかく評価がたかくて、実証済みなんです。もともとコンディショニングはアメリカから日本に入って来ていると思いますが、日本はそれをさらに進化させて、今では立派なジャパンオリジナルになっていると思います。日本のようにちゃんとコンディショニングを定義して、体系立てて展開しているところはないんです。絶対いけると思っています。
日本人トレーナーにとって、今は海外が学ぶ場所ではなくて勝負する場所になってきている。日本人トレーナーが世界に出ていくことを目標にしてやっていきたいですね。ジャパンオリジナルのコンディショニングとトレーナーが世界に進出して、羽ばたく日は近いと思いますよ。

戸田貴子さん
呼吸器内科医
“今回お話を伺ったのは呼吸器内科医の戸田さん。戸田さんは普段から患者様と向き合う中で感じることがあるそうです。それは健康を維持するための生活習慣の重要性。予防医学の観点からもピラティスは効果的だそうです。”
きっかけは小学生からの肩こり私は姿勢の悪い方でないと思っていましたが、肩こりがひどいのでもしかしたらこの姿勢に問題があるのではないかと考えました。マッサージにも通いましたが、根本的に治すための治療でないという認識があり、なにか良い方法はないかと常に考えていました。たまたま美容院で手にした雑誌でアランチャを知ってから一年半毎週通っています。姿勢改善や肩こりの軽減には時間がかかるだろうと思っていましたが、通い始めて数ヶ月でいままで全くなかった腹筋がつきお腹が固くなったのが面白くて通うのが楽しくなりましたね。今までの人生で腹筋がついたのは初めてです(笑)。後悔している患者さんの声仕事柄、お年寄りの患者さんに接することがおおいのですが、運動不足や筋力不足などが原因で骨がすかすかで、転んで骨折して寝たきりの患者様もいらっしゃいます。おおくの患者さんが後悔している姿を見ると、私は少しでもそうならないように元気なうちから運動しておくべきだと思いました。胃がんや乳がんのように事前に防ぐことが難しい病気もありますが、肺がんや成人病はタバコをやめたり、食生活に気をつけることでだいぶ病気になるリスクを減らせます。日本でも高齢化が進み、これからはますます、自分の責任で自分の体を扱わなくてはいけないと思います。不自由なく生活していける体を作っていくことや自分の体と上手に付き合う術を身につけておくことは、老後のためにお金を貯めるのと同様に大切なことです。誰でも体は衰えていくもの、少なくとも準備をせずに老いてから後悔するのであれば、今から準備するのが良いと思います。生活習慣のコツを教えてもらうアランチャの先生は解剖学や筋肉に関する知識が豊富です。例えば、歩くときにここを意識したら、もっと有効に筋肉が使えるでしょう。というアドバイスを貰えば、今日からはじめても良いし、10年間やってもいいです。アランチャでは体や筋肉を上手に使うコツを教えてくれます。それを一つずつ覚えていけば先生が居なくてもその知識をつかって心掛けが出来る。それはとっても心強いことですし、なにより生活が生き生きしてきます。先生方はそれぞれ教え方は違いますが、根本は同じで分かりやすいのでとても良いです。とくにマンツーマンのレッスンは自分に合った体の使い方を丁寧に説明してもらえるのでとても気に入っています。心の変化と認識の違い私の場合は、胸を反れば、背筋が伸びていれば姿勢が良いと思っていました。どういうものが姿勢の良いことなのかきちんと分かっていなかったんですね。今では、心もアライメントも、そして、姿勢を良くするということの“良い姿勢”というのを認識できるようになりました。呼吸が浅いということもここに来るまでは気づきませんでした。今は、肩が内旋(内側に丸まっている状態)のときなど姿勢を正すように、また鞄は左右交互に持つなど日頃から注意するようになりました。アランチャに通い始めて自分の体に“気づき”があったことが本当に大きい変化です。完全に肩こりが無くなったわけではないですが、気長に無理なくトレーニングを続けていきたいです。

ピラティスは頭で考えて、納得して、やりがいを感じる人にオススメ

ピラティスは自分の体に興味を持っている人、探求したい人にオススメですね。ここを使うとこういう体に仕上がるという論理的で医学的なメソッドです。ですので、頭で考えて、納得して、やりがいを感じる人にオススメです。漠然と一日1km泳いだら良いというのではなく、体をこういうふうに使うと、こういう結果になって、ここの関節がこういうふうに使えるから、結果としてこうなるというように筋道たててトレーニングできます。そういう方が理解しやすいし、やる気が出るという方にオススメです。あとはマラソンをはじめて膝を傷めたとか、平泳ぎで股関節を傷めたとかって耳にしますが、こういった怪我の予防にもピラティスが役立つと思います。逆に今すぐに痩せたい、ダイエットしたいという方にはあまりオススメできませんね。ダイエット目的であれば食事療法もして、ウォーキングやジョギングもして、ピラティスもやって、とやらないと効果がでないと思います。週に一回ピラティスしているだけではすぐに体重を大きく落とすことは無理だと思います。

知ることがはじめの一歩

自分の体の健康や美しい姿勢を意識することが大切ですが、これって知らないと意識できないですね。なので、まず指摘してもらって、意識を変えてもらって、そこに結果がちょろちょろとついてくる。いずれ良くなってくれれば良いというくらいの気長さも必要かと思います。また例え話になりますが、知るということは、タバコが体に悪いということで終わらず、何故いけないのか、どんな弊害が起きるのか、結果どんな病気になるのか。きちんと理解できているということです。ここまで理解できた上で吸うのは本人の自由かもしれません。しかし、今は良いけど30年後に肺の病気になり、病院へ車で家族に送り迎えしてもらう、医療費の負担も増える。その可能性があるならば自分だけの問題ではなくなってきます。これからは予防医学をもっと浸透させていくことも私たち医者の大切な仕事だと考えています。怪我や関節を傷めないようにする、予防医学の観点からもアランチャで提供される知識とメソッドはすばらしいと思います。

秋山友紀子さん
医療法人愛医州会アイランド眼科 院長
日本眼科学会認定専門医

“秋山さんは新宿にあるアイランド眼科の院長さんです。目の専門家から見てピラティスって目の健康に効果ありますか?率直にその辺を伺ってみました。ポイントは目の筋肉は直接マッサージ出来ないので血液の循環を良くすることが大切で、そのためにピラティスが効果的だそうです。”アランチャに通うきっかけは?

ネイルサロンで雑誌を見てアランチャを知りました。ちょうど何か始めたいと思っていて。そんな時に誌面で紹介されていたアランチャのマスターストレッチが気になったのですね。マスターストレッチの写真が載っていて、これってどんなものなのかなぁと思って、その日のうちに体験レッスンを申し込んで、そのまま2年ほど通っています。私はサボリ癖があるのでこんなに続いているのが不思議です。

気に入っていただいている点はどこでしょうか?

先生と髪型の話になって、その時どこでパーマかけているのって話をしたら先生のお母様と同じ美容院だったこともあり、話が弾んだりして。身体を鍛えるということもあるけど、話しながらわいわい出来るのがよくて、皆さんユニークで話題が豊富なので話がつきないですね。他のスタジオとはだいぶ違うと思います。アランチャのレッスンでは先生が私の身体の動きをしっかり見てくれる。これがとても貴重です。今までもバレエなど習っていて、けれどそこのグループレッスンでは、たまに回ってきた先生に見てもらえる程度で、終始しっかり動きを見てもらえるは初めてだったので、それも嬉しくって。こんなにしっかり見てくれるし、おしゃべりも楽しいし、本格的だし。そんなこんな思っているうちに通っています。
マンツーマンがやっぱり良い気がします。2対1ぐらいでもとても良いですね。アランチャの先生は解剖学がしっかりしているから、他のスタジオと比べてアプローチが全然違う。私の痛みがどこから来ているのかということをすごく見てくれて。おそらく原因はここだろうと。ジムの先生ではなかなかそこまで勉強している先生はいないのではと感じます。

秋山さんは眼科医がご専門ですが、専門家の目から見てピラティスやマスターストレッチは目の疲れや、予防に効果はあるのですか?

ピラティスもマスターストレッチも、私は眼精疲労の対策になると思います。眼精疲労とは、目のピントを合わせている筋肉が疲れることで起きます。この筋肉をコントロールしているのが自律神経なので、体調が悪ければその活動が悪くなるからピントが合いにくくなる。寝不足だと視力が落ちるのは、この影響もあります。なので、自律神経が整うと眼精疲労はよくなりますね。
あと筋肉そのものについての話。同じ所ばかり見ていると、目のピントを合わせる筋肉が凝り固まってしまうので、それ以外の所を見ようとすると筋肉がうまく動かず、ピントが合わなくなるのです。なので、目の筋肉をほぐすことが必要になりますが、直接マッサージすることは無理ですので、なるべく目を動かして循環を良くすることが大切です。近くをみる作業をしているときは、20分に1回20秒間遠くを見るとか、目をぐるぐる動かす体操をして目の筋肉が凝らないように予防することを私は推奨しています。あと、目の血管は首の血管に繋がっているので、首の血液の循環が悪いと眼精疲労も悪化します。だから首や肩の運動も大事。それと、目の周りのリンパの流れも首に繋がっているから、首・肩の運動はむくみ・くまの改善にもなるかと思います。まとめると、ピラティスやマスターストレッチで、首にかぎらず全身の循環が良くなり体調が整えば、目の働きも自ずと良くなるということです。
ピラティスは呼吸をメインにゆっくりと負荷をかけて全身を動かして行くので、走ったり泳いだりするのとは違って、関節や筋肉に余計な負担をかけずに全身の血流の循環を良くできる。ゆっくりと体温が上がってきてじんわりと汗をかき、負担も少ないので、運動が苦手な方でも始めやすいと思います。ピラティスの中でも、首と肩を暖めストレッチさせるムーブメントがいくつもあるので、自分に合うものをチョイスして続けるのがおすすめです。
あと他の病気のお話しをすると、もしかしたら緑内障にも有効かもしれません。緑内障には色々なタイプがあるのですが、その1つに、目の眼圧が高くなって、目の神経が傷み、視野が欠けてくるタイプの緑内障があります。眼圧が高いと目の神経の循環が悪化して、神経が傷むのではという説があるので、血液の循環をよくすることは大切だと思います。首・肩周りのマッサージをすると、マッサージ前に比べて、マッサージ後の方が眼圧が下がるため、それを治療の一つとして取り入れている先生もいらっしゃいます。こういうことも考えると、緑内障の眼圧管理にもピラティスを効果的に取り入れることも可能だと思います。

その他にも、運動が目の病気の予防になることはありますか?

適度な運動が予防に繋がるという目の病気はいくつかあると思います。生活習慣病の代表ですが、糖尿病の予防は眼科医としてとても重要だと思います。長年糖尿病を放置していると、目の血管がボロボロになって来て、目の中に出血や網膜剥離を起こし失明してしまう糖尿病網膜症という病気があります。これは、きちんと糖尿病初期に食事・運動療法で治療することで防げるものです。激しい運動が苦手な方に、負荷の少ないピラティスは是非お薦めしたいと思います。
あと近年、加齢黄斑変性症という目の病気が増えています。昔より、食生活が欧米化してきたことや、パソコンや携帯など光を見る時間が増えきていることが関係しているのではないかと言われています。この病気は、本来ないはずの新生血管が網膜の下側に出来てしまい、そこから出血したり、血液の成分が漏れることで網膜がむくんで視力が低下します。予防として、魚を中心とした和食が良いといわれているのと、タバコは良くないといわれています。若い方には起きない病気なので、適度な運動で身体を若く保つことも予防に繋がるかもしれないですね。